世界を創造した神様は怠惰でした。 何せ自分で作った世界の管理を、自分の一部から作り出した神様に任せてしまうんですから。 遊びっぱなしで片付けない子供のような神様です。 生み出された神様は出来損ないでした。 与えられた役割は【楽園の守護者】 ですが世界を管理する能力があるのに自分だけでは動けません。 傍から見れば似たもの親子。 でもこういう時ばっかり自分の事は棚に上げ、親らしいことを言うものです。 そこで創造神様は神様の友達として少年を寄越しました。 しかし神様は話せません。 そんなことを知ってか知らずか少年は神様の言いたい事がわかるようで、一緒に世界を見て回りました。 これではどちらが神様かわかりませんね。 時には海を作り、山を崩し、川を繋ぐ。 それらは世界に住む人間が望んだことでした。 創造神様が作った世界を神様が整地する。 そんな折、一人の少女が現れます。 なんと彼女も神様でした。 少年の様に神様を扱えませんが、少年以上に神様とお話ができたのです。 数年後、立派な青年に育った少年は契約者様と呼ばれました。 同様に立派なレデーになった少女は巫女様と呼ばれました。 そして大人になった彼らは気づくのです。 あれ、これ創造神いらなくね? こうして子供は親元から巣立つものです。 ですが子離れ出来ない親の如く、何もしてないのに親ぶりたい創造神様。今更ながらあの手この手で気を引こうとします。それはさながら親に構ってほしい幼子の如く。 話せない神様も共に過ごした契約者様と巫女様が精神的に成長するにつれ、考え方が大人になっていました。 なんて面倒な親なんだ。 とは言える訳ではありませんが、神様は既に立派な【楽園の守護者】でした。護るべきは彼であり、彼女であり、世界なのです。 なんて親不孝な子供だ。 創造神様にとっては全てがただの暇つぶし。 自分の暇を潰せない存在に価値など感じる訳もありません。 怒った親は怒り任せの指ばっちん。 途端に神様大暴走。 契約者様の操作も巫女様の声も届きません。 自分達が作り上げた世界を自分達で壊すなど、愉快極まる眺めだと創造神様は高笑い。 ですが、このままでは作った世界が全て壊されてしまいます。 考えのない親ですね。 そこで創造神様は考えました。 ただ止めるのはつまらない。それならばと創造神様は新たな神を生み出します。 生み出された神様は全部で六体。 暴走した【楽園の守護者】は次第に追い詰められます。 創造神様は【楽園の守護者】が追い詰められる度に世界を分断し逃げられないようにしました。 世界を分断する度に、その世界を閉じる為に神様一体を柱としました。 世界は6つに分断されました。 最後の世界で遂に【楽園の守護者】は倒されます。 そこを見逃さず【楽園の守護者】も創造神様の手により世界の柱となりました。 残った一体をどうしようかと創造神。 面倒なのでもう一つ世界を分断し柱とすることにしました。 親の義務どころかポイ捨てです。 こうして世界は7つに分断されたのです。 え、契約者様と巫女様ですか? 契約者と巫女様は【楽園の守護者】に搭乗していましたよ? 創造神様からすれば取るに足らない存在です。 きっと【楽園の守護者】と一緒にいた事すら知らなかったんじゃないですか? 一つの世界では見飽きてしまった創造神様も、世界が7つあれば存外飽きなかったようです。 世界の発展を数百年眺めていました。 そこでようやく気づきます。 かつての【楽園の守護者】と同じように契約者様と巫女様が一つの世界に必ず存在する事を。 とはいえ、契約者様はその世界の神様自体が休眠中なのであんまり意味がありません。それに引き換え巫女様は休眠している神様と感応でき、意思の疎通や一部の能力を利用できた様です。 主に神様との対話、他世界の巫女様と精神を共有、他世界に繋がる門の生成。世界の柱となった神様と感応した結果、精神状態による天候や気候に与える影響。これにより、世界の住人は巫女様が神様の生まれ変わりと祀り上げます。 地震雷火事巫女様ですね。 その能力で世界の数を把握し、世界の名前を神様と巫女様の名前から取り決めました。 最初の世界を多層に7つ分断したのに、全ての世界で同じような人間が現れます。 巫女様を管理する人間と組織です。 こんな事ばっかりするから人間は成長しないって言われるんですよね。 そんな訳でどこの世界でも同じ様に教会が巫女様を管理しちゃう訳です。 巫女様の言葉は世界の言葉、引いては神様の言葉なのです。 この世界が多層世界な事、他の世界にも自分と同じ巫女様がいることを教会のおえらいさんだけは知っています。 長い時間が経ちましたが世界の一つだけ、ずっと暗闇の世界がありました。 【楽園の守護者】が封印された世界です。 ここも他の世界同様、契約者様や巫女様がいました。 ですが、何代巫女様が変わろうと世界は暗いまま。 いつしか、この世界の神様は【永遠の闇】と呼ばれるようになりました。 更に数百年の時が経ち、創造神様が世界に飽き始めた頃に変化が訪れました。 なんと【永遠の闇】が目覚め、契約者様が【永遠の闇】を扱えるようになったのです。 ですが困った事に巫女様が神様と契約者様を管理できませんでした。 歴史は繰り返すと言いますが、第四異層世界グエスギガ・ララに封印された【永遠の闇】グエスギガがまた世界を混乱に陥れるのか。その手始めとして第二異層世界、第五異層世界は既にグエスギガの手に落ちたようで……。 これはそんな毒親から生まれた子供の反抗期の記録……、 なのかなぁ。