カレド聖王国エンブレナ城の城下町キルカムト。テテド商業地区をツダは悪態をつきながら歩いていた。 「んだよ、あの野郎。何がお前を仲間と見れない〜だ。馬鹿じゃねぇの。てめぇらなんて一度も仲間だと思ったことねぇっつーの」 ──国内最大規模の統括ギルド【クラウン】 総勢500名を超える大規模ギルドは8つのギルドと下部組織から成り立っており、王都への貢献度で序列が設けられている。が、序列3位までは王国直属のギルドであり騎士団を兼ねた組織となっている。実力は玉石混交、貴族が箔を付けるためだけに所属するなど政に利用される面もあり、裏では形骸化されたギルド【フェイク・クラウン】とも揶揄された。 その為、実力や貢献度は序列4位から8位までの民間ギルドで競っており、序列4位が実質的には最上位とギルド内の人間には周知されている。 序列1位【クラウン・オブ・クラウン】 序列2位【クラウン・オブ・ソード】 序列3位【クラウン・オブ・マジック】 序列4位【夜霧】 序列5位【ブルー・プラネット】 序列6位【テテド商会連合・回収班】 序列7位【ルビラニッチェの魔女】 序列8位【終わりなき旅】 ツダ・カルマは本日【テテド商会連合・回収班】の補給部隊を追放された。その他のギルドを含め計4回目の追放である。 吐き慣れた悪態を飽きる事なく口から零し、ツダは路地裏の奥の奥へと進み、廃墟の中へと踏み入る。使っていないエントランスはいつも埃臭が、外から見える分には廃墟でなければならない。奥の扉を開き地下へ通りて行くと【隠れ家】には既に誰かがおり、扉の隙間からは明かりが漏れていた。 「ツダ、おかえりー。また追放されたんだねー」 「はえーよ、何で知ってんだよ」 「そりゃあ、情報屋だからね」 ダボダボの服を着た小柄な少女は散らかった机の上のモニターを眺めながらアメをなめている。 ルイ・ハース、自称情報屋の幼馴染。情報屋であるかどうかは定かではないが、情報が早いのは確かであった。 「他の奴は」 「あんたと違って粘ってるよー」 「あんだよ、追放されんの下手か?」 「普通、追放される事ないからね? 相当無能か有害じゃなきゃ」 「そうだな。俺程の有能さを理解できないなんて無能だし、そんな奴らといたら俺に毒だ」 「そんな考え方してるから追放されるのわかってる?」 呆れたルイの横を通り過ぎ、ツダは古いソファに寝転がる。やや据えた匂いはするが、王都のどこよりも安心できる場所であった。 「……でさ、まじでやるの。あれ」 「あぁ? あー、あれ。なんか問題あんの?」 「いや、問題しかないというか問題を作りに行ってるよね?」 「そもそもお前ら集めたの、それやる為だし」 一頻り目の前のモニターを見た後に席を立つルイは、ソファに寝るツダのお腹の上に腰を下ろして頭を叩く。 「馬鹿なんですかー?」 「おめぇよ」 「本気なの?」 「あたぼうよ。ムカつくだろ、あいつら。自分は有能ですみたいな顔して他人を無能と見下して、偉そうに俺達をギルドから追放しやがって」 「それはまぁ、わかるけど。追い出される僕達も大概だよ?」 「あん? 知らねぇよ。俺達が正しい事見せつけてやるんだよ。そんで悔しがる奴らを嘲笑ってやるんだ」 「性格悪いの自覚して?」 「この国は間違ってる、だから俺らで正す。どこもおかしくないだろ?」 「追い出された逆恨みでギルド潰しするような人ってこんな思考なんだね。何か納得しちゃったよ、僕」 ◇